道鬼「明らかに、亡き頼光殿の霊が恨みとなり、関白殿を病に陥れているものでございます」
道長「やはりそうであったか、頼光が死してから、急に身体の具合が悪うなったと思うていたが・・・考えてみれば、頼光ほどよく尽くしてくれた者もいなかったのに、余も冷たい仕打ちをしたものじゃ。あの時、会うてやるべきであったのう」
道鬼「いくら悔やんでみても、今となっては遅うにすぎます。関白殿の威光にかけて、頼光どもの功を称え、その誉れを後の世まで長く語るようにし、霊を慰むるがよろしかろう」
道長「そうじゃな、余が関白を退き出家の身となり、後一条に言うて頼光の受領の地位を渡辺綱に譲り渡すように計らい、何処かの国司に取り上げればいくらかは恨みも治まるであろう」
道鬼「それはなりませぬ、関白殿! 綱ごときを受領などと、きゃつは政を行う器ではござらぬぞ・・・自ら悪をなすは人の定めというもの、綱は、人に指図されて悪をなすだけの小さき者、政を行う者においては断じて許すまじき性根!」
道長「だが、そうしなければ、頼光の霊が余を恨み殺しかねぬ!」
道鬼「では、頼光殿が弟、頼信殿を受領になさればよろしい」
道長「・・・それで、頼光の霊は静まるものか?」