2006年01月17日

16、最後の戦い

その頃、寺院から金目のものを奪った般若の一団が、誰も通る者のない通りを傍若無人に馬で駆け抜け、荒れ果てた頼光邸に大挙して入って来ると、盗品を運び覆面を脱ぎながら邸内に土足で上がりこんだ。

覆面を脱いだ顔は、皆かつて頼光の兵どもで、その中にはただ一人金時軍で助かった元検非違使・坂上次郎の顔も見える。

灯りを持った般若の女が、薄暗い邸内の廊下を歩いてきて、ふとある部屋の前で立ち止まり、その灯りをかざして部屋の奥をじっと見る。

「酒呑童子、待っていたぞ!」

と野太い声がして、外道丸に続いて犬丸と猿丸の姿が現れる。

「おのれ、まだ生きておったのか!」

般若の女が、艶っぽいが迫力のある声で言う。

「腕を返してもらおうか!」

といって、外道丸が般若の女に向って飛び掛りながら、山刀で斬りつけると面が縦に割れて、その下から貴族のように化粧を施した綱の顔が現れる。

「なんだその顔は、お主のさもしい心根が透けて見えるようだぞ!」

外道丸があざけるように言うと、怒りに燃えた綱が太刀を抜いて外道丸に斬りかかる。

そしてそれからは、犬丸、猿丸と邸内にいる綱の配下が一緒になって凄まじい戦いとなる。

外道丸と綱の戦いは、人間同士の戦いというよりは、一方が獰猛な熊か虎とするならばもう一方は牙を剥いた狼か狒々のようであり、凄まじいスピードと重量感溢れる戦いを繰り広げる。

そして、犬丸と猿丸が手強い次郎をやっと二人掛りで仕留め、ついに外道丸の山刀が綱の右腕を切り落とした。

腕の付け根から血が噴出し、綱が獣のような叫びとも悲鳴ともつかぬ声を上げ、天井に張りつき恨みに燃えた目で睨みつけると、次第に眉が吊り上り目が赤く充血し口が裂けていってその人相がみるみる変わっていった。

外道丸、犬丸、猿丸の三人とも、これにはさすがに驚いて見守るだけで、綱の顔と身体は鬼のように変身していった。

「カー!」と荒い息を吹きかけると、鬼は怪鳥のような速さで身を翻して外に逃げ出した。

外道丸がすぐにその後を追ったが、鬼は中庭にいた馬に飛び乗りそのまま邸内から逃走した。

外道丸は、落ちていた槍を掴み、馬に乗って逃げる鬼をめがけて思いっきり投げた。

槍は矢のように飛んでいって、鬼の背中から心臓を刺し貫いた。
posted by 映画プロデューサー at 11:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 酒呑童子ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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