2006年01月16日

8、もう一人の怪物、渡辺綱

この事件から、本格的に頼光と四天王を彩る歴史が動き始めることになる。

少なくとも、この事件は頼光にとって白昼に通り魔に出会ったようなものだったが、武力で何百何千人もの人間を殺戮してきた頼光にとってありうべき事態で、思い出すだけで頭に血が上りその怒りはますます高まるばかりだった。

また、この事件は渡辺綱にとっても耐えがたい侮辱であった。

頼光の怒りは女物の衣装をまとった外道丸の姿に増幅され、なかなか都に兵を構えさせぬ関白道長や他の貴族たちに対する長年の不満とあいまって、頼光の怒りは激しく綱にまで向けられた。

「国許から兵を呼べ、それがならぬなら都に兵を構えよ。公家どもががたがたぬかすなら殺してしまえ、どんな手を使っても都に兵を構えるのだ」

こうして事件は、ただ頼光たちにとどまらず関白道長をも巻き込んで、予想以上の急ピッチで大きく状況を変えていくことになる。

頼光の命を受けた綱は、どこまでも冷静に堂々と兵を構えるための方法を考えた。

あるいは、頼光はそんな綱の能力を買っていたのかもしれない。

頼光は自分にもしもの事があった場合、綱にすべてを継がせるつもりだった。

綱の動きは速い。

綱は、早速武装した数十人の兵を連れて、検非違使から要求されていた賄賂の砂金千両に二千両を加えて、正面から検非違使寮の別当の執務室に乗りこんだ。

そして、このたび都に兵を構えることになるが、それについて別当の特別の協力を求めたいと単刀直入に申し込んだ。

数日後の夜に盗賊どもが関白邸を襲い、二千両の砂金と警護の雑色や下部を数人殺傷するが、検非違使は知らぬ振りをしておいてくれというのが詳細な協力の内容だった。

別当は、三千両もの大金を検非違使に持ち込まれ、大刀を抜きその切っ先を自らの腹に据え、聞き入れてもらえぬときは腹を掻っ捌く(別当を斬ってから)という、綱の命を張った脅しには逆らえなかった。

それでも、別当がそんな無法が通ったら都中が毎夜恐れおののくことになるというと、綱にそれが狙いだと応えらては、さすがに賄賂ずくめで動く別当も暗澹たる思いがした。
posted by 映画プロデューサー at 11:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 酒呑童子ストーリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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